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ラドン温泉は健康に良い?原発事故での被曝との比較は?

鳥取県東伯郡三朝町にある三朝温泉(みささおんせん)は、ラジウム温泉・ラドン温泉で有名な温泉地です。
放射性物質であるラドンは、ラジウムがアルファ崩壊してできます。ラドン温泉とは、ラドン222の濃度が74 Bq/L以上のもの、ラジウム温泉はラジウムが100 ng/L以上含まれる温泉を指します。

ラドンおよびラドンが崩壊していでる各種放射性同位体が放つ放射線は、健康に寄与するとの考え方られています(ホルミシス効果)。
痛風、血圧降下、循環器障害の改善や悪性腫瘍の成長を阻害するなどといった効能があると考えられているのですが、これらを客観的に証明した医学的エビデンスは得られていません。

オーストリアや日本、ロシアをはじめ、世界中に、療養のために活用されるラドン温泉やラドン洞窟が存在します。

 ラジウム温泉・ラドン温泉の危険性

ラドン温泉やラジウム温泉は健康にいいかのように宣伝されていますが、ラジウムとそれが崩壊して生じるラドンはれっきとした放射性物質で、法令でも規制を受ける危険物質です。

放射線はDNAに傷を付ける作用がありますが、ラジウムからラドンになる過程で放出さされるアルファ線は、修復効果があまり期待できず危険です。それを健康にいいかのように宣伝することは考え物です。

三朝温泉と一般平均にを比較した空気中ラドン濃度を表にしてみましょう。

表1:空気中のラドン濃度 (ベクレル/m3)
三朝温泉地 一般平均
屋外 50~ 120 3~7
屋内 60~360 7~30
浴室 200~7700 --

 

 次にラドン濃度の法令規制値を上げます。

 

表2:平衡等価ラドン濃度の法令規制値(濃度単位:ベクレル/m3)
放射線業務従事者が常時立ち入る場所での濃度 3000
管理区域設定の基準濃度 300
敷地境界を越えて排出が許される濃度

20

表1を見ると三朝温泉の空気中ラドン濃度は、屋外・屋内ともに、平均的な土地に比べれば空気中ラドン濃度が高くなっています。これは地域の特性として避けることができないものですし、受け入れるしかあません。しかし、これとても表2の「敷地境界を越えて排出が許される濃度」を超えています。

さらに表1の浴室を見ますと、最高値で7700ベクレルと、管理区域設定の基準濃度の10倍どころか、放射線業務従事者が常時立ち入る場所での濃度の2倍を超えています。

こういったことをもって、「ラドン温泉が健康にいいなんてん論外だ」という放射線学の専門家もいますし、じゃあ実際に健康調査をやてみればということで調査して、問題なしという学者もいます。


 

ラドン温泉は健康に良いのか?

さて、ここで気になるのが三朝温泉に住んでおられる方々の健康統計です。癌の発生率を調査したところ、全国平均の半分程度だったという学説がありますが、調べ治したら有意差はないという説もあります。ホルミシス効果が実際に存在したとしても医学的誤差を超えるほどの効果はないということらしいです。

『放射線および環境化学物質による発がん―本当に微量でも危険なのか?』(医療科学社) という本の対談のページ(p237)には以下のように発言している学者がいます。

甲斐倫明:ラドンの健康影響,つまりプラスの健康影響の論文(Mifune M, et al. Jpn J Can Res.1992; 83: 1~5.)は,三朝温泉地区で,標準化死亡比(年齢構成の異なる集団の死亡率を比較するために,標準的な年齢構成に合わせて計算した期待死亡数に対する実際の死亡数の比)で見た全がんが有意に低いと報告しました.このとき,肺がんの相対リスクは有意ではなく,むしろ胃がんの相対リスクが有意に低いとされました.この論文は,ラドンのプラスの健康影響を示す論文としてときどき引用されることがありますが,注意する必要があります.なぜなら,同じ研究グループが調査期間や方法を変えて調べたところ,全がん発症率に有意な傾向は認められていません(Ye W, etal. Jpn J Can Res. 1998; 89: 789~796.).なぜ異なる結果となったかについてですが,最初の論文ではラドンの被ばく地域の設定や死亡数データの問題点などが指摘されています.また,肺がんに注目したケースコントロール(症例対照)研究においてもラドンレベルの高い地域とそうでない地域との間に有意な傾向は認められませんでした(Sobue T, et al. J Radiat Res. 2000; 41: 81~92.).三朝温泉地区のラドンの一連の研究からは,少なくとも現時点では,ラドンが発がん率を有意に減らすというデータは得られていないといっていいのではないかと思います.

「ラドン温泉は健康に良い」という説を発している人は前者の研究を引用することが多いのですが、なぜか後者の研究はほとんど引用しないみたいです。作為的なものを感じますね。

 

何はともあれ、長期間の湯治と子供の入浴は避けた方がいいというのと、「ラドン温泉は健康に良いからこの程度の被曝なら大丈夫」というという人は信じない方がよさそうです

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