放射能汚染食品によって体内に蓄積されたセシウムを排出するものとして一躍有名になったのがペクチンです。
ペクチン (Pectin) とは、植物の細胞壁や中葉に含まれる複合多糖類で、食品業界では増粘安定剤(増粘多糖類)として使われています。酸性の食品にも使えますので、ジャム・ゼリーなどのゲル化剤や、ヨーグルト飲料などの乳タンパク安定剤として使用されます。ジャムやゼリーのプリプリした食感は、ペクチン由来のものです。
ですから、ジャムやゼリーの原材料表示を見ると、ほとんどのものに使われていることに気づくでしょう。フルーチェのように、カルシウムとのゲル化作用を直接利用ような食品もあります。
ペクチンは、サトウダイコン、ヒマワリ、アマダイダイ(オレンジ)、グレープフルーツ、ライム、レモン、リンゴなどから酸抽出されたものですから、比較的安全な食品添加物に分類されます。
私たちが食べたものは、腸管内において消化酵素と腸内細菌によって分解されますが、ペクチンは人間の消化酵素では分解されないので食物繊維として機能します。整腸作用やコレステロール低下作用などを有すると言われています。
ペクチンは消化管の中でセシウムのような陽イオンと化学的に結合し、それによって大便の排泄量を増やすことが知られています。
ペクチンのセシウム排出作用を研究した論文として、ベラルーシの研究機関「BELRAD研究所」の、「Decorporation of Cherrnobyl Radionuclides チェルノブイリにおける放射性核種の除染 」(Annals of the New York Academy of Science,2009)が有名です。ネット検索すると、富山医科薬科大学の田澤賢次名誉教授による翻訳を元にしていると思われます(注1)。
この論文では、リンゴのペクチンを利用した、放射性セシウム除去効果を発表しています。
要点をまとめておきます。
調査期間は1996 年から2007 年。
調査対象はベラルーシの160,000 人を超える子供達。
調査方法として18 日から25 日間、ペクチンを20%含む添加食品を、1回5gを1日2 回投与=ペクチン2g)を治療目的で服用させ、服用前後のCs-137 放射線量を測定。比較としてペクチンを与えない群も設定。
結果は、ペクチンを与えた子供たちのセシウム量が平均30%から40%の減少を示した。
というものです。セシウムを排出するのだから、他のビタミンミネラルも排出されるのでは?というのが気になるところですが、この論文では「血中における血清カリウム・亜鉛・銅・鉄のバランス量に対して無害」と記されています。
(注1)富山医科薬科大学 田澤賢次名誉教授が「Decorporation of Cherrnobyl Radionucleides(「チェルノブイリ地区の放射性物質からの開放)」として訳しておられますがRadionucleidesは誤植で、Radionuclidesが正しい綴りです。また、Decorporationを「解放」として訳しておられますが、「除染」の方がいいのではないでしょうか?
ペクチンの効果に対して否定的な論文もありますので注意が必要です。
「チェルノブイリにおける放射性核種の除染 」をまとめたのは民間団体で、信頼性に疑問があります。この論文に対して、公的団体であるフランスの放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は、「Evaluation of the use of pectin in children living in regions contaminated by caesium(セシウム汚染地域に住む子供たちにペクチンを使うことの評価について)」という論文で、手厳しく批判しています。ネットではペクチン使用の利点ばかり書いている情報が多く、批判的な論文を取り上げないのは問題かと思います。
理性的に考えてみれば、ペクチンは腸管から吸収されません。ということは体内にあるセシウムを排泄する作用があるとは考えられません。効果があるとすれば、腸管内にあるセシウムを吸収されにくくする作用でしょう。
デマ情報の可能性大です。
ペクチンのセシウム排泄作用は疑問ですが、自分で試してみるという手はありますし、普通に食品として愉しむという使い方もいいと思います。
入手方法は、既製品を買うか、自分で作るかということになります
既製品は楽天などを使ってネットで購入できます。業務用のペクチン、サプリメントのペクチン、リンゴ抽出のものなどいろいろなタイプが売られています。
最後にりんごペクチンの作り方を書いておきましょう。
りんごのペクチン含有量は、皮付きりんご一個当について約0.4~1.6gです。2gを摂取するには、りんご1.5~5個分必要となります。ただし、ペクチンは特に皮の部分に豊富ですが、皮ごと食べるには農薬の問題があります。
1)リンゴを縦に四つ割りした後、5㎜厚くらいに切る。
2)リンゴを鍋に入れ、少量の水とクエン酸で柔らかく煮ます。
水とクエン酸の割合は水2リットルに対してクエン酸5gくらいです3)2が沸騰したら、火力を少し弱め、軽く沸騰させながら30~45分くらい加熱を続ける。
4)柔らかくなってジャム状になったら茶漉しに入れます。
5)スプーンの背で押して、下に落ちて来る液体がペクチンです。
※水分量が少なくて、ジャムがあまり固いとペクチンを漉すのに不便ですし、多いとペクチンが薄まりますので、適当に調節してください。
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